聴くのはメタル

聴くのはメタル

※ご覧(尊敬語)になっていただきありがとうございます
ベビメタロスでお悩みの方、暇つぶしに読んでいただければ幸いです

 

 

某日。社内にて。

 

「ライブは3時間くらいやると思ってたんですよ。だからあっという間でした」

「うん。アルバムはまだ1枚しか出してないし、ライブは基本、MCなしだからね」

「僕は『ド・キ・ド・キ☆モーニング』って曲が一番好きですね」

「そうなんだ。初めて海外に知れ渡るきっかけになった曲だね」

「それにしても、メタルってあまり聴いたことがなかったんですけどカッコイイですね!」

「そうだね。学生の頃は周りで流行ってたから、その頃はよく聴いてたよ」

「じゃあ僕もメタルの曲でも聴いてみようかなあ。BABYMETAL以外で」

「おっ、いいんじゃない。メタルの造詣が深まれば、より演奏の部分も気に入ると思うし」

 

 

「新春キツネ祭り」に連れて行ってからというもの、よほど気に入ったのか、
後輩のK山くんと交わす会話はBABYMETALのことばかりだ。

 

自分としては、こうやって身近な人と気軽にBABYMETALの話ができることは素直に嬉しい。
なにせ1年以上、知り合いとBABYMETALについて語ったことはなかったのだから。
改めて彼をライブに誘って良かったと感じる今日この頃である。

 

 

「あっ、でも、どういうのがメタルなんですか?」

「どういうのって言われてもサブジャンルは多いからなあ」

「ざっくり教えてください。これぞ、ザ、メタルってやつを」

「うーん……、全般的に音楽が激しいのがメタルだよ。重低音でギターのリフが高速とか」

「他には?」

「えっ、他? あとはそうだなあ、ツーバス連打とか、デスボイスとか」

「いまいちよくわからないですね」

「とにかく音楽を聴いていて自然とヘドバンしてしまったら、それはメタルだと思っていいよ」

 

 

これぞ「METAL RESISTANCE」の真骨頂といったところだろうか。
彼のように、BABYMETALをきっかけにメタルに興味を持った人は国内外問わず多いんだと思う。

 

それは昨年末に放映されたNHK特集の中で、DragonForceのSam Totmanが、
「俺が大好きなパワーメタルと言うジャンルにBABYMETALは新しい刺激を与えているんだ。
パワーメタルに影響を受けながら、今まで興味のなかった新しいファンを増やしてくれている
ところが俺はすごくうれしいよ。そこが最高なんだ」と、
イメージと随分違う渋い声で発言した内容からも真意が探れるし、
さらには、当初は批判的だったアメリカの音楽ファンサイト「noisey」のライターKim Kellyが、
ニューヨーク公演を観た後でのライブレビューでそれまでの自らの見解を変え、
BABYMETALのことを
「より濃厚なメタルへと誘う理想的なゲートウェイバンドとしての役割を担っている」
と端的に評し、
「若いファンたちが最終的に真のメタルファンになってくれるのなら、それも悪くはないだろう。
好きにしな、BABYMETAL」
と締めくくった最後の言葉でも示されている。
※引用元:Kim Kellyのニューヨーク公演ライブレビュー

 

そしてそういった存意は、何十年にも渡ってメタルシーンを支え続けてきた大物バンドたち、
とりわけスラッシュメタル四天王には、おそらくより顕著な意義深さとしてもたらされていて、
BABYMETALの神髄であるそのハイクオリティなライブパフォーマンスを観るにつけ、
「この子たちの存在は閉塞感の漂うメタルシーンに新風を吹き込んで活性化してくれるばかりか、
メタルシーンそのものを大きくしてくれるはずだ」と瞬時に、マクロ的に捉えたからこそ、
フェスの会場裏で喜んでフォトセッションに臨んだのではないだろうか。CARCASSもまた然り。
なにも彼らは、BABYMETALの3人が自分の娘や孫娘のように可愛いからといった
単純な理由でカメラのフレームに収まったわけではない(はずだ)。
メタルを聴いてくれる若者がどんどん増えてくれることを密かに期待してのことだと思う。

 

 

「それで、次のライブっていつですか?」

「つい先日、ワールドツアー2015の日程が発表されたんだ」

「そうなんですか。それはすごいですね。で、どこでやるんですか?」

「メキシコ、カナダ、アメリカ。それとドイツにオーストリアだね」

 

 

「BABYMETAL WORLD TOUR 2015」が発表されたのは9日の深夜。
その後は興奮のあまりなかなか寝付けず、おかげで翌日は会社に遅刻してしまった。

 

それはさておき、今回のツアーも随分とタイトなスケジュールのようだけど、
彼女たちの体力面においては実のところ僕はさほど心配はしていない。
真夏のサマソニで東京、大阪と連日ライブをこなすのだから大丈夫だと高を括っている。
しかし別の面での心配は大きい。それは父兄目線によるものに他ならない。

 

初めて訪れる異国の地で何か不便なことはないだろうか。
時差ボケで体調を崩したりしてないだろうか。
水や食事は合っているだろうか。
枕が変わってもちゃんと十分な睡眠はとれているだろうか。
etc.

 

これを読んでくれているメイトの方々には、
「そこまで心配することないよ。大袈裟だよ」と笑われてしまうかもしれないが、
彼女たちはまだ10代半ばの娘だから、ついつい心配になってしまうのだ。

 

だから、前述のNHK特集や、ベビメ大陸などのオフの映像は大変貴重で、
彼女たちの笑顔を見てようやく、ああ、元気そうだ、
ライブだけじゃなく旅自体も楽しんでるなとホッと胸を撫で下ろすことができるのである。

 

本当は遠征したいのだけれど、さすがにGW明けに有休で連休を取得することは憚られる。
だから今後のワールドツアーに関しても、
できるだけ早いタイミングでオフ映像が表に出てきてくれるとありがたいのだが、
とにもかくにも、彼女たちにはこのまま「WONDERFUL JOURNEY」を地で行ってもらい、
自分たちも楽しみつつ、“HELLO WORLD”を共通語に世界中の人々を笑顔にしてもらいたい。
彼女たちにはそれを実現できる魅力がある。

 

 

 

また、「BABYMETAL WORLD TOUR 2015」の発表に合わせ、
BABYMETALの公式サイトのヘッダー画像は下記に変わった。

 

 

 

3人の姿形もさることながら、目を引くのは「THE DARK KNIGHTS BEGIN」の文字。
思い出すのはずばり、クリストファー・ノーランの三部作『ダークナイト トリロジー』。
「バットマン ビギンズ」、「ダークナイト」、「ダークナイト ライジング」の3作品だ。
この「THE DARK KNIGHTS BEGIN」はおそらく「バットマン ビギンズ」がモチーフなのだろう。

 

そしてそれは、「新春キツネ祭り」の最後のムービーにあった、
“「Trilogy」の三点を繋ぐ三種の神器を手に入れる”といった文言に符合する。
「Trilogy」とは3部作のこと。
また今回の「BABYMETAL WORLD TOUR 2015」は“第1弾”のスケジュールとして発表された。

 

つまり、BABYMETALサイドの言う「Trilogy」は「WORLD TOUR 2015」を意味し、
3部作よろしく年内に第2弾、第3弾のワールドツアーを行うということではないだろうか。
そして後報で発表される度にヘッダー画像は、あくまでも想像だが、「ダークナイト」、
「ダークナイト ライジング」のジャケ写に似せたものに取って代わるのかもしれない。

 

ダークナイト

ダークナイトライジング

 

 

 

仮に「Trilogy」がそうだとして、では“三種の神器”とはいったい何か。
第1弾の「WORLD TOUR 2015」の最後が6月21日の幕張メッセとなっているから、
そこで1つ目の神器を手に入れたといったような演出があるのかもしれない。
もしかして“三種の神器”は新曲のことかなと思ったけど、それならば、
「Road of Resistance」のときのように“新たな調べ”と表現するはずである。
ちょっと予測がつかないけど、ワクワクしながら来たるべき日を待ちたいと思う。

 

 

「ワールドツアーのことはわかりました。じゃあ6月まで日本でライブはないんですか?」

「5月にMETROCKでやるよ。ワールドツアーの合間に。それが間近のライブかな」

「METROCK? なんですかそれ。ロックマンのシリーズですか?」

「フェスの名称だよ。今年でまだ3回目だけど、BABYMETALは一昨年の1回目に出てるんだ」

「そうなんですか。しかしまだまだ先ですね」

「仕方ないさ。3月までヴォーカル以外の2人がさくら学院のイベントで忙しいからね」

「あっ、ヴォーカルの子! SU-METAL! 3人の中で一番可愛いですよね!」

「えっ? あ、うん。まあね。でも、可愛いというより、なんか、凛々しいって感じかなあ」

 

SU-METALといえば、その彼女の独特な歌声についてよく考察するのだけれど、
なぜ彼女の歌声にここまで心酔してしまうのかは正直なところよくわからない。
衝撃度は、声質は違うがマライア・キャリーの「Emotions」を初めて聴いた時のそれに近く、
それでいて今は亡きカレン・カーペンターの歌声を聴いた後の心地良さも感じるのである。

 

低音が苦手なSU-METALが持つ音域は、おそらくマライア・キャリーの半分ほどなんだろうけど、
高音の部分の声量は同等にあり、そこから伸びていく声の張りは、
僕にはSU-METALのほうがまっすぐで力強くあるように思う。
おそらくそこのあたりが心の琴線に触れ、涙することに繋がっているのかもしれない。

 

 

「それから、えっと、バンド名は忘れましたけど、演奏がめちゃくちゃ凄いですよね」

「神バンドっていうんだ。彼らは国内屈指の凄腕ミュージシャンたちなんだ」

「あんなに轟音だとは思ってもみませんでした」

「初めての人はみんなびっくりするだろうね」

「あと、ダンスもめちゃくちゃ可愛かったですね!」

「そうだね。それがBABYMETALの一番の特徴であり、メタルにおける斬新さでもあるんだ」

「特にあの右側の子! MOAMETALでしたっけ? ダンスも笑顔も最高でしたね!」

「えっ? あ、うん。そうだね。MOAMETALのあのキラキラした笑顔は間違いなく最高の代物だよ」

 

BLACK BABYMETALのダンスは本当に凄い。
キレやリズム感が他のアイドルたちのそれとまったく違い、高次元である。
そのことは多くのメイトたちが共通して抱く印象ではあるけれど、
なにより彼女たちがフロントダンサーであることが素晴らしい。
ライブを前提にダンスの振りやフォーメーションを考えているからなのか、
はたまたメタル・ダンス・ユニットの呼称どおり
ダンスに重きを置いているからなのかはわからないけど、
いずれにせよ、ステージを所狭しと動いては踊り続ける2人は、
観る者すべてを一瞬にして虜にしてしまう魅力で溢れている。

 

個人的な願望としては、BLACK BABYMETALが踊るピンクレディを一度見てみたいと思っている。
さすがにあのミニスカートの衣装はいただけないが、
今のゴスロリ基調の衣装のまま是非ともやってもらいたい。
本家を凌ぐほどのダンスのキレやシンクロ度が見れることになると思えるから。

 

 

「あー。早くまたライブに行きたいですね」

「そうだね。今から5月が待ちきれないよ」

「僕ですね、電車での通勤中、ずっとBABYMETALのアルバムを聴いてるんですよ」

「ははっ、それはこっちも同じだよ」

 

そうそう。
僕はBABYMETALのアルバムが発売されてから1年近く毎日聴き続けているのだけれど、
それは僕にとっては驚くべきことだった。
元々音楽は嫌いではなかったけど、電車通勤の時間は、
それまでの10年ほどは大好きな読書に割かれていたからだ。
それが今はどうだ。
ずっと文庫本の発売を待ち遠しく思っていた横山秀夫の新作「64」が本屋の棚に陳列されても、
「これを読む時間があれば、何度も繰り返し聴いているBABYMETALを聴く方がまだ良い」と思い、
まったく手に取ることすらしなかったのである。
極端に言えば、仕事以外の時間はほとんどBABYMETALのことだけに費やされている。
やはりBABYMETALは生活習慣はおろか僕の人生そのものを劇的に変えてくれている。

 

 

「BABYMETALって聴けば聴くほどいいですよね!」

「おっ、君もすっかりメイトだねえ」

「なんていうか、スルメのようなんですよね。噛めば噛むほど味が出るみたいな」

「ははっ、あ~たし~はス~ルメ派なっのっ! ってかあ」

 

K山くんとの会話が弾み、僕はすっかり上機嫌だ。
人前で歌詞を、それもよりによってそのフレーズを口ずさむほどに。
我ながら気色悪いことではあるのだけれど。

 

しかし後輩が発した次の一言で、僕の表情は途端に雲行きが怪しくなってしまう。

 

 

「先輩とはまるで違いますね!」
「えっ?」

 

 

僕は眉根を寄せ、後輩の瞳を探る。
しかし彼の発言の真意は汲み取れなかった。
いったいどういう意味なのだろう。
そもそも僕はバンドなんてやっていないし、カラオケで歌うことも稀だというのに。

 

動揺の色を見せる僕を尻目に、K山くんはずっとニヤニヤしたままだった。
気味が悪い。
まさかこれも「天使の笑顔に騙されそうだw」ってやつの類いなのだろうか。
そう思った矢先、さもありなんといった具合に
彼はニヤついた表情のまま続けて快活に声をあげた。

 

 

「先輩なんてまったく味気がないですもんね!」

 

 

すぐには彼の言葉は呑み込めなかった。
怒りが湧いてきたのは数秒経ってからだ。
彼は、人としての魅力がないと僕に言っているのだ。
僕は充血させた目で鋭く後輩を睨みつける。

 

くっ。ふざけるなよ。
僕は女性に甘く、部下への評価は辛く、仕事とあっちは淡白で、
若い頃は地方の風俗で何度も苦い経験をし、
友人や後輩へのおごりは必ず渋る、
しょっぱい性格をした、とても味のある人間なのだ!

 

 

僕は鼻息を荒くして後輩に顔を近づける。
「ちょっ、K山!」

 

ここではっきり言わなければ男じゃない。
先輩としての威信にかかわる問題でもある。

 

僕は語気を強めて指摘する。
「言っとくけど、YUIMETALだってダンスがめちゃくちゃ上手で可愛いんだからな!」

 

 

興奮すると人は理性が飛ぶんだなと実感した瞬間だった。
あろうことか、僕は大事なところで発言の内容そのものを間違えてしまった。
今言いたいことはそれではない。
もっとも少し前から胸の内でくすぶっていたことは否定はできないが。

 

 

「ちょっとK山くん。今のは言い過ぎじゃないかい?」
気を落ち着けながら僕は再び言い返す。

 

「だってそうじゃないですかあ」
K山くんが眉を八の字に下げる。

 

 

「僕のどこが味気ないっていうのさ」

「えっと、まず、まったく話が面白くないですし、嘘で僕を陥れようとするし」

「陥れる? 誰が、いつ、どこで」

「先輩が、このまえのBABYMETALのライブで僕に」

「はあ!? そんなことしてないだろ!」

「しましたよ。ももクロTEE着て来いって。あれ、あとから思ったんですけど、わざとでしょ」

「なっ!? おまえ、おれ、おまっ、おまーぇ、おれぇ?」

「そう。おまえです」

「あん? 今なんて?」

「ああ、先輩です」

「陥れてないって」

「陥れましたって」

 

まさかK山くんがそんなふうに思っていたなんて思いもしなかった。
「新春キツネ祭り」から1ヵ月。
彼はいつ頃から僕に疑いの目を向けていたのだろう。
いや、今はそんなことはどうだっていい。
まずは疑いを晴らすことが先決だ。
しかしK山くんは、そこまで言うとそそくさと席を離れて行ってしまった。
所用があるようだ。
僕は大きく溜息を吐きながらゆっくりと椅子に腰を下ろす。
※詳細は前記事参照:新春キツネ祭りレポ

 

 

今まで楽しく会話をしていただけに、急に非難されたことはショックだった。
まるでジェットコースターに乗っているような感覚だ。
上昇MAXのテンションは、あっという間に地の底へと落ちていった。
あとでちゃんと誤解を解こうと思いながらおもむろにPC画面を開く。
壁紙にしている「BABYMETAL WORLD TOUR 2015」の絵が目に飛び込んでくる。

 

ジェットコースターに乗っているような気分を味わう。
そういえば昨年ののBABYMETAのワールドツアーで2回ほどそんな気分を味わった記憶がある。
1つは「Sonisphere Festival UK」。
そしてもう1つはLady GaGaのサポートアクトを務めた5公演のライブだ。

 

BABYMETALが「Sonisphere」に出て大丈夫なのか、
ひどい野次や仕打ちを受けるのではないかと心配したところ、
結局それは杞憂に終わり、大勝利に大喜びしたときの感情の起伏。

 

そしてリストモンスターと呼称されるGaGaファン、
まずメタルに精通していないだろうと思われる人たちを前にして、
BABYMETALは受け入れられるのだろうかと心配したところ、
1回目のフェニックス公演でLady GaGa自らが最前列で「ギミチョコ!!」に合わせ
ノリノリでヘッドバンキングしたことは周知のとおり。

 

また3回目のステイトラインの公演では、全席着席の指定席だったため、
早い時間の前座で行われたBABYMETALはガラガラの状態でライブを敢行するはめとなり、
Instagramの短い動画でその模様を確認した際には可哀想だとひどく落ち込んだものだが、
その数時間後に、Lady GaGaの公式TwitterだかFacebookに、
キツネサインをしたLady GaGa本人とBABYMETALの3人の写真が掲載されたときには、
「Sonisphere」のときよりも感激して何度もガッツポーズをしたものだった。
まさにジェットコースター。
そのときは地の底に落ちたテンションがぐんぐん跳ね上がっていったのを覚えている。

 

しかしながら、メタルと対極にあるポップのファンであるリストモンスターたちに
受け入れられるかどうかといった不安は終始拭い去ることはできず、
観客もノッていたようだという情報もあったが、
それは駆けつけたメイトの可能性であることは否めず、
その後のソルトレイクシティー、デンバー公演まで僕は引き続き注視した。
そう、会社のPCの前に張り付きながら。

 

しかし、そこでは重大な問題が発生していた。

 

というのも、社内での僕の机の位置はセンターで、
しかも前後左右に衝立がない。
つまりPCは野ざらし状態。
周りの人にすぐに見られてしまう。
だからたまにチラ見で確認するくらいしかできなかった。
まるで戦いに挑んでいるが如く、
命を削るようなパフォーマンスで観客を魅了する彼女たち同様、
僕もレベルこそ低いが現場で戦っている状況だったのである。

 

ちなみに向かいの席は、まだBABYMETALを知らない頃のK山くんだった。
彼は、こっそり動画を観ている時に限ってよく話しかけてきた。
そのたびに僕は歯にホウレン草が挟まった時のような苛立ちを覚えた。
つい、おまえなんて便座を下げるのを忘れて嵌りかけたらいいんだと内心で毒づいた。

 

左隣には60代の経理のMさんが座っている。
城南電機の故・宮地社長に似ているが、故・横山弁護士のようにも見える。
どちらにせよ、仮にMさんが僕の挙動に気がついて口を開いたとしても
何を言ってるのかちょっと分からないだろう。これは無視しても問題ない。

 

最大の問題は、右隣に座る、よく嫌味を口にする上司だった。
思えば、彼は前々から僕が勤務中にBABYMETALの動画を漁っている行為に
感づいている節があった。

 

しかしこれまで一度も注意をされたことがない。気のせいだろうか?
若い頃、「生理的に無理」と言われたのを「生理だから無理」と勘違いして、
「じゃあ今度いつ会える」と当時オキニだったキャバ嬢にしつこくつきまとったことがあるが、
やはりこれも僕の勘違いなのだろうか。

 

そして背後に座っているSさん。
50を少し過ぎたオールドミセスだが、僕は彼女の、
風吹ジュンを連想させる柔らかい物腰と笑顔を実は大層気に入っている。

 

しかし彼女はまったく僕には興味がないとみえ、
向こうから話しかけてくることはほとんどない。
今のK山くんとのように、BABYMETALのような共通の話題があればとも思うけど、
彼女の清楚な風体から察するに、メタルとはまったく無縁だろう。

 

 

でもわかってるんだ。
メタルはメタルでも、
「カセットテープはメタルでしか聴かないぜ」と
男らしさをアピールすれば落とせることくらい。

 

 

そのうち機会があれば実践してみたいと思うが、
間男の僕に最適なタイミングが訪れるかどうかは知る由もない。

 

それよりも今は、5月のワールドツアーに備え、
机周りにファイルの防波堤を作るなどの対策を講じることが先決だろう。
まだ確認はしてないが、時差の関係から、
トロントやシカゴでのライブは平日の午前中のはずだ。
戦いは既に始まっている。

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